OUR LIFE 2

作品のねらい

難民キャンプで生まれ育った一人の少年とその家族の生きざまと心の軌跡を8年間に渡り描きながら、難民キャンプの変化と難民たちはどのように関わりながら生き、第三国定住地でどのような社会関係を形成し、自分たちの「生」をどのように受け止めているのか考察する。難民キャンプのありようとは、そして難民にとっての「故郷」とは何か、作品を通して問いかける。

イントロダクション

ビルマでは、ビルマ民族主体の中央政権と少数民族の間で60年以上も戦争が続いた。一時停戦状態が続くが、タイ・ビルマ国境に避難してきたビルマ少数民族約15万人(約12万人がカレン民族)が、1984年から難民キャンプ内で今も生活を送り続ける。報道メディアやNGOなどが制作する作品では、ステレオタイプ的な紛争描写や難民描写が多く、民族や宗教対立が原因であるかのようなイメージを創り上げてきた。そのイメージが民族・宗教上での差別や不要な援助や、国際的な武力による仲介を正当化し支える要因にもなりかねない。

本作では、民族意識やビルマ軍事政権への憎悪と抵抗の気持ちを超えた普遍的な「今」を生きるカレン人のある少年とその家族の日常を通し難民キャンプの変容を描いていくことで、難民問題の根本的な問題提起をしたい。具体的には、個と家族の変容の中にキャンプの変容を、更にキャンプの変容の中に社会の変容を参与観察しながら、個の変容が何に根付づいているのか、社会(集団)がどのように変化していきカレン人がキャンプや第三国定住地、キャンプ閉鎖後にどんな関係性を築きながら生きていくのか考察する。

直井里予監督プロフィール

1970年茨城県ひたちなか市生まれ。
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士後期課程修了 博士(地域研究)。2015年4月より京都大学東南アジア研究所機関研究員に着任。1998年からアジアプレスに参加し、ドキュメンタリー映画『昨日 今日 そして明日へ 』(2005)、『昨日 今日 そして明日へ2(第一部 アンナの道 ・完全版、第二部 いのちを紡ぐ) 』(2013)などを製作。釜山国際映画祭AND基金を受賞。現在、ビルマ難民映画『OUR LIFE 2~故郷(仮)』と『バンコク物語(仮)』を制作中。著書に『アンナの道 HIVとともにタイに生きる』(岩波書店)がある。


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