主人公のアンナに出会ったのは2000年。今から13年前のことになります。当時9歳だったアンナの娘ジップは2年前にバンコクの看護大学に進学しました。思春期になりアンナを悩ませ続けたジップでしたが、「看護師になって、母のような人を助けたい」という幼い頃からの夢が叶うまであと一歩です。紆余曲折あったアンナの家族もタイの社会状況の変化の中で新たな旅立ちを予感させます。『昨日 今日 そして明日へ2 第一部 アンナの道(完全版)』は、2009年に発表した『アンナの道〜私からあなたへ・・・』を再編集、更に2012年10月から3月に追加撮影したものを足し、アンナ家で過ごしたこれまでの日々を描きました。
そして『昨日 今日 そして明日へ2 第二部 いのちを紡ぐ』は、13年前、アンナとはじめて出会った場所、エイズデイケアセンターが舞台です。センターで働く看護師や医師、そしてNGO関係者たちと共に、アンナをはじめとするHIV陽性者の方たちが主体となって、社会の中に「新たな関係性」を構築していく過程を12年間に渡って追った作品です。村の中に流れ続ける時間、そして変化し続ける空間。北タイの自然の中で紡がれ続けてきた人々の生きざまと関係性の有りようを描きました。
尚、今作は、博士論文執筆と同時進行しながら製作し、フィールド型の既存の研究に映像表象の有効性と問題点を論じながら、新たなフィールド型ドキュメンタリー論の構築を試みた作品です。また、自律し、自分の道をしっかりと歩んでいくアンナをはじめとするHIV陽性者の姿、そして北タイの「緩やかな関係性」を表現する際に 「蜘蛛の巣」の象徴表現を用いて、映像表現の可能性と限界を問いかけました。
日本語タイトルは、北タイでアドバイスを頂いている赤塚順氏に。英語タイトルは、京都大学での主指導教員である速水洋子教授につけて頂きました。今作も製作にあたり多くの方々にお世話になりました。心より感謝申し上げます。なおいりよ(京都にて 2013年11月6日)
直井里予(なおい りよ):1970年茨城県ひたちなか市生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士後期課程修了 博士(地域研究)。2015年4月より京都大学東南アジア研究所機関研究員に着任。1998年からアジアプレスに参加し、ドキュメンタリー映画『昨日 今日 そして明日へ 』(2005)、『昨日 今日 そして明日へ2(第一部 アンナの道 ・完全版、第二部 いのちを紡ぐ) 』(2013)などを製作。釜山国際映画祭AND基金を受賞。現在、ビルマ難民映画『OUR LIFE 2〜故郷(仮)』と『バンコク物語(仮)』を制作中。書籍に『アンナの道〜HIVとともにタイに生きる』(岩波書店)がある。
制作総指揮 瀬戸正夫 野中章弘 吉田敏浩
制作指揮 赤塚順 田中茂範 速水洋子
編集協力 プッサジ・ピパット
翻訳・字幕協力 シリポーン・ルンルアンタンヤ
ジニー・ヘラシィー 吉村千恵 キーラン・アレクサンダー
製作助成 釜山国際映画祭アジアドキュメンタリーネットワーク基金
制作協力 京都大学
宣伝協力 チェストパス、糸賀毅
アジアプレス・インターナショナル
佐藤真
谷口21世紀農場
谷口巳三郎 赤塚カニタ
チュン病院
ボンコット・プランスワン
ケサラ・パンヤ―ウォン デイケアーセンターのメンバーの皆さん
ラックスタイ・ファンデーション
中薗久美子 ガンチャナー・ソムリット
タイフィルム・ファンデーション
チャリダー・ウアバムルンジット パヌ・アリー
パッチャナー・マハパン 盆子原明美 根本友美 相馬幸香
中原亜紀 慶淑顕 高杉美和 遠藤環 田辺文 積際愛里
岩波書店
首藤英児
新井優子
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 地域変動論ゼミの皆さん
速水ゼミの皆さん
吉村千恵 木曽恵子 久保忠行 ピーチ 田崎郁子 佐藤若菜
堀江未央 佐治史 和田理寛 近藤奈穂 辻田香織 林育夫
映像なんでも観る会(京都大学東南アジア研究所)
茨城県ひたちなか市YTT上映実行委員会の皆さん
青木傑子 秋山千賀子 礒崎幹子 海野宣三 海野昭彦 海野透
江幡和子 小笠原保代 小野 修 片岡勝利 上村せつ 川崎秀夫
川西ふじ江 久保田明子 黒田順子 御所野英宣 御所野訓代
児玉英世 小船行男 澤畠光 下タ村修 清水実 鈴木誉志男 鈴木邦道
高橋篤 坪田純一 直井啓吾 直井文代 中島正周 中村洋
新山英輔 新山礼子 橋田良造 樋之口修一 平山牧彦 弘津啓子
松井節子 松田正人 松本由美子 安正機 横須賀正留 横瀬友美
四方光 六戸紀子 渡辺貞範 和地均 横川和子
武子みち子 松原裕 林武 直井勝太郎
茨城県ひたちなか市教育委員会
市毛小学校6年4組昭和57年度卒業同窓生の皆さん
藤岡朝子 長岡野亜 松元義則 秦武志
加藤基
直井里予
直井里予 アジアプレス・インターナショナル